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null「……大輔さんも、帰ってゆっくり休んで下さい……明日は、忙しいですから」 「はい、分かりました……え?」  答えてから首をかしげた。大輔さん? 助手席を見ると、彼女は両手で口を押さえている。 「ご、ごめんなさい。高坂さんがずっと名前で呼んでらっしゃったので、つい……移ってしまったみたいで……」 「別にいいですよ、大輔さんで」  そう呼ばれるのは単純に嬉しい。より親密になった気がする。 「分かりました……そうします」  彼女は意外にあっさり応じ、 「大輔さん……大輔さん……」  暗唱するように口の中で小さく繰り返す。そういえば、男性を名前で呼んでみたい、というようなことを言っていた。 「……じゃ、俺も栞子さんって呼んでいいですか」  さりげなく切り出したつもりだったが、実際どう響いたか分かったものではない。とにかく、返事はなかった。断るにしてもなにか言ってくれないと困るのだが。  ライトバンは落石防止のアーチをくぐり、下り坂に入った。おそるおそる彼女の横顔を窺うと、眉を寄せてぎゅっと目を閉じている。怒っている――というより、痛みでもこらえているようだった。それにやけに息が荒い。 「栞子さん?」  建長寺前の信号で一時停正したところで、俺は声をかけた。 「……はい」  眼鏡の奥で薄目を開けて、か細い声で答える。それでようやく腑《ふ》に落ちた。俺は身を乗り出して、彼女の額に手を当てる。案の定、かなりの高熱だった。 「手が、冷たくて……気持ちいいです」