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2015-01-24 20:33    louis vuittonヴェルニアルマ
『聖酒変化の儀式は、今昔必ずしも一様にはあらざるも、聖王二つの神器をつくりたまひてのち、儀者は酒星の前にまかりいでて詩《うた》を歌ふこと、これその常法とはなりぬ。詩は陶酔《ヽヽ》の至純なる表現なればなり。陶酔なき詩は詩にあらず。言の葉の真は酒《ささ》の真に通ず……』  漢字がいっぱいの文語文で書かれたその本の内容は、要約すると次のような驚くべきものであった。  千年前、ペルシアの偉大な占星術師オマル・カイヤームは、占星術の奥儀《おうぎ》「見えざる矢」の術によって酒星と聖酒変化の秘密を知り、自ら聖酒の秘儀を行った。  聖酒変化は酒徒が酒霊に酔心を捧《ささ》げる儀式だが、それはいかにしてなされるか? 詩によって行われるのだ。翼を持つ言霊は天へも地へも自在に通行する。儀者はこれに陶酔を託す。オマルは己の清高な酔心を四行詩にあらわし、夜どおし酒星の前で歌った。酒星はこれを嘉《よみ》し、あらたな酒霊を醸《かも》したので、オマルは後世のため、その四行詩《ルバイ》を一巻の書物に書き残した。ところが、何も知らぬ後の文人たちは、オマルの詩を勝手に改竄《かいざん》したり、自分がつくった偽作を写本に挿入《そうにゆう》するようになる。これらの偽作は「さまよえるルバイ」と呼ばれるが、そのために『ルバイヤート』の本文は乱れ、しまいには偽作と真作のけじめもつかなくなってしまった。  しかるに天の配剤は、酒聖の真言をかかる嘆かわしい状態から救うため、一人の使徒を地上につかわした。時代は下って十九世紀、英国サフォークに生まれたエドワード・フィッツジェラルドという人物がそれである。  フィッツジェラルドは裕福な田舎地主だった。かれには天性大詩人の素質がそなわっていたが、自らそれに気づくことなく、郷里に沈潜し、生涯《しようがい》孤独のうちに、イスパニアやペルシアなど遠い異国の文《ふみ》をひもとくことを道楽としていた。  そんなかれに、ある時友人が図書館の片隅《かたすみ》で見つけた『ルバイヤート』の写本を貸してくれた。かれは数日、辞書と首っ引きでそれを読もうとしたが、そのペルシア語は難解で、かれの語学力では歯が立たなかった。ほうりだして寝てしまうと、その夜、光りかがやく一柱の天使が夢に立った。その天使は百の眼を持つ智天使《ちてんし》でもなく、燃える熾天使《してんし》でも、大天使ミカエルでもない。かれらが棲《す》む天球のさらに彼方《かなた》、いと高き酒天におわします大酒天使であった。 「兄弟《はらから》よ、この世界は今病んでいる」と酒天使は語った。 「西方に二千年続いた天地創造の教えは、進化論によってくつがえり、科学は人の安心立命を奪った。人の魂がかつてたよりし礎《いしずえ》は揺らぎ、民衆の心は無明の闇《やみ》に迷っている。  兄弟よ、迷いの時代にただひとつたしかなこと。それは、生命《いのち》の春は疾《と》くすぎゆくということだ。花の季節に遅れて何とする。酒を飲まずして何とするのだ。  よいか、オマルの四行詩には、この理《ことわり》が正しく記されている。おまえはこの『現世経《げんぜきよう》』を英語にうつし、迷える衆生《しゆじよう》を絶望から救うのだ」  ハッと目覚めると、部屋にはふくいくたる薔薇の香りと葡萄酒の芳香が漂っていた。フィッツジェラルドは不思議に思い、ナイトキャップのまま起き出して孤独な書斎に蝋燭《ろうそく》をともし、紅の葡萄酒を開けると、杯片手に『ルバイヤート』の一字一句をあらためて読みなおした。  すると! おお!  酒神の霊感がおりたかのごとく、否《いな》、酒聖の魂が千年の時を越えてかれにのりうつったかのごとく、それまで難解だった字句は自《おの》ずと意味明らかになり、それと共に、鳩尾《みぞおち》のあたりから涙のかたまりがこみあげて来て、歌の調べが脳裏に滾々《こんこん》と湧《わ》きあがったのだ!  かれはペルシア語の原文を見ながら、頭に浮かぶ英語の詩句を書きとめると、それらはすべて『ルバイヤート』の見事な訳詩になっていた。 『ルバイヤート』の翻訳は、こうしてはじまった。